最近は『マタ旅(=マタニティ旅行)』という言葉が話題になったり、マタニティプランのある海外ツアーがあったり、妊婦さんでも、気軽に海外旅行を楽しむ方が増えてきました。
とはいえ妊娠中の旅行、とくに海外旅行となると、それなりにリスクが伴うことも忘れてはいけません。
できれば、妊婦さんやお腹の赤ちゃんの安全を考えて、妊娠中の海外旅行は避けたいところですが…
「妊娠中のストレスを発散して、リフレッシュしたい!」
「最後に旦那さんと、2人だけで海外旅行したい!」
というお気持ちも、よくわかります(^^)
また、妊娠がわかる前から予定していた旅行なので、キャンセルが難しいという方もいるでしょう。
そこで今回は、私自身の経験もふまえて…
「妊娠中に海外旅行をしたいけど大丈夫かな?」と、不安に感じている妊婦さんのために、妊娠中の海外旅行に伴うリスクや注意点、機内で快適に過ごすためのコツなどについてお伝えしたいと思います。
しっかり予備知識をつけて準備をしておくことで、旅行先でのトラブルをできるだけ回避しましょう!
目次
妊婦さんの海外旅行に伴うリスク
まずは、妊婦さんが海外旅行中に陥りやすいトラブルや、リスクについて説明していきます。
安定期で体調が良い妊婦さんであれば、国内旅行など、身近なところへ旅行する方も珍しくないでしょう。
ただし海外旅行となると、すこし事情が変わってきます!
妊婦さんの海外旅行では、次のようなトラブルのリスクを心配しなければなりません。
- エコノミークラス症候群
- 食中毒
- ウィルス感染
- 現地で出産(早産・破水)
それぞれ、もう少し詳しく見ていきましょう。
1.エコノミークラス症候群
妊婦さんが飛行機でエコノミークラス症候群になるリスクは、通常の6倍といわれています。
エコノミークラス症候群とは、長時間同じ姿勢でいることで起こる「静脈血栓塞栓症」です。
脚の血流が悪くなり血栓ができ、その部分に腫れや痛みが生じます。
さらに血栓が肺の静脈をつまらせ、呼吸困難を引き起こし死亡することもあるという、とても怖い症状なんです。
一般的に『エコノミークラス』症候群と呼ばれていますが、ビジネスクラスやファーストクラスでも発生します。
とくに4時間以上の長時間フライトで、エコノミークラス症候群症状がでやすくなるといわれています。
妊娠中に飛行機に乗るときは、次のような対策をとるようにしましょう!
- ゆったりした服を着る
- 機内を歩いたりして同じ姿勢を長時間取らない
- 水分補給をしっかりする
- 着圧ソックスを履く
2.食中毒
妊娠中は免疫が低下しているので、食中毒には要注意です!
健康な人が食べて大丈夫な物でも、妊婦さんは食中毒になってしまうことも珍しくありません。
できるだけ、衛生面で安心できる国や滞在先を選びましょう。
3.ウィルス感染
感染症のリスクが高い国への旅行は、避けたほうが無難でしょう。
とくにマラリアは、妊婦さんが感染すると高確率で流産を引き起こし、最悪、妊婦さんが亡くなるケースも。
どうしても感染症のリスクが高い国へ行かなければならないときは、かかりつけのお医者さんに相談することをおすすめします。
4.現地で緊急出産(早産・破水)
海外旅行中に、予定以上に早く出産をしてしまう可能性もあります。
日本国内にいても起こり得ることですが、海外の場合は、言葉の問題や医療費の問題が追加されます。
とくに海外での医療費は、ビックリするほど高額だということは覚えておきましょう!
2014年には、海外旅行先のハワイで飛び込み出産をしたカップルが、95万ドル(約1億4000万円)の医療費を請求されたというニュースも話題になりました。
『ミリオンダラー・ベイビー』という、嬉しくないニュースのタイトルがつけられたりもしましたが…(^^;)
実はこの妊婦さん、海外旅行保険には加入していたんです。
ところが、妊娠中に膀胱感染症で治療を受けていたため、「ハイリスク妊娠にも関わらず、海外旅行に出かけた」と判断され、補償金の支払いを拒否されたのだとか。
海外旅行保険に加入するときは、どこまでカバーしてくれるのかもしっかり確認しておきたいですね!
妊娠中の海外旅行の注意点
次に、妊婦さんが海外旅行をするときの注意点についてです。
旅行先での思わぬトラブルを防ぐためにも、次の4つに注意しましょう!
- 旅行の時期は安定期がベスト
- 締め付けない服装を選ぶ
- 旅行先は近場の過ごしやすい国
- 余裕のあるプランを立てる
では、ひとつずつ説明してきますね!
1.旅行の時期は安定期がベスト
海外旅行をする時期は、流産の危険性がある妊娠初期や、破水しやすい妊娠後期は必ず避け、妊娠16〜24週頃までの安定期(妊娠5〜7ヶ月)がおすすめです。
ここでひとつ注意したいのが、安定期であっても、海外旅行先でのリスクはなくならないという点です。
旅行前には必ずかかりつけのお医者さんに相談して、できれば日本語だけでなく、英文でも診断書を書いてもらいましょう。
2.締め付けない服装を選ぶ
海外旅行中は、体を締め付けない、ゆったりとした服装を選びましょう。
締め付けで気分が悪くなったり、飛行機でのエコノミークラス症候群になるのを予防するのに役立ちます。
また、機内でシートベルトが苦しいと感じたら、CAに声をかけて、延長用のシートベルトを持ってきてもらいましょう(^^)
3.旅行先は近場の過ごしやすい国
妊娠中の長時間フライトは、体に負担がかかります。
海外旅行の目的地は、フライト時間が短め(5時間以内)で、気候の良い国が理想的です(^^)
また日本人観光客が多い国なら、万が一のときに、日本語が話せるスタッフがいる可能性が高いというメリットもあります。
おすすめの目的地は、近場の韓国、台湾、グアム・サイパン、少しフライト時間が長くなりますが、ハワイも日本人が多いので安心ですよ。
4.余裕のあるプランを立てる
「せっかくの海外旅行だから!」といって、スケジュールをたくさん詰め込んでしまっては、怪我や体調不良の原因になりかねません。
あくまでも、妊婦さんや赤ちゃんの体調を第一に考えて、余裕のあるプランを立てましょう。
歩きまわって観光をしなくても楽しめる、ビーチリゾートでのんびりするのもおすすめです(^^)
妊婦さんが飛行機で快適に過ごすためのコツ
妊娠中の海外旅行の不安要素として、『慣れない飛行機での移動が心配』という方も、多いのではないでしょうか?
そこで妊婦さんが、機内や空港で快適に過ごすための4つのコツを、飛行機内や空港サービスを熟知している、元CAの私がお教えします(^^)
1.通路側でトイレに近い席を選ぶ
妊婦さんには、通路側でトイレに近い座席がおすすめです!
妊娠中はトイレに立つ回数が多くなるので、隣のお客様に気兼ねなく席がたてる通路側は必須(^^)
また通路を歩いているときに、機体の急な揺れで転倒しないよう、トイレの近くの座席を選ぶのがベストです。
2.ストレッチをする
フライト中はずっと座りっぱなしで、下半身が圧迫されてうっ血状態にならないように、足をマッサージしたり、ストレッチをしてみましょう。
長時間フライトの場合は、1〜2時間ごとに通路を歩くのも効果的です。
3.こまめに水分補給をする
妊娠中は多めに水分をとらなければならない、というのはご存じの方も多いでしょう。
しかし機内では、普段よりさらに水分補給を意識する必要があります!
機内の空気は非常に乾燥しているうえに、気圧が上がっているため水分不足になりがちです。
水分をまめにとることは、エコノミークラス症候群の予防や、風邪などのウィルス感染を予防するのにも役立つので、ぜひ普段以上に水分摂取をすることを心がけてくださいね!
あまり冷たいものばかり飲むと体が冷えてしまうので、できれば常温か温かい飲物を飲むようにしましょう(^^)
遠慮せずにコールボタンを押して、CAに頼んでくださいね♪
4.航空会社のマタニティサービスを利用する
航空会社によっては、妊婦さん向けのサービスが受けられるところもあります。
たとえばJALやANAでは、
- 優先カウンターで待たずに受付可能
- マタニティマークを忘れた際はカウンターでもらえる
- 機内への優先搭乗
- マタニティーグッズの貸出(ひざ掛け、クッション、延長シートベルト)
といった、サービスが受けられます。
予約時に、妊娠中であること(出産予定日)を伝えておくと、スムーズにサービスが受けられますよ(^^)
ほとんどの航空会社では、28週以降の搭乗には医師の診断書が必要です。
航空会社によってルールが異るので、事前に利用する航空会社のホームページやカスタマーサービスで、搭乗の条件を確認しておきましょう。
妊婦さんの海外旅行【持ち物リスト】
妊娠中の海外旅行に、持っていくと安心な持ち物をリストにまとめてみました♪
- 母子手帳※
- 健康保険証※
- 医師に処方された薬
- 海外旅行保険の保険証券(コピーでも可)
- 防寒着
- 生理用ナプキン
- マスク
- 腹帯、腹巻き
- 気圧ソックス
- 消毒ハンドジェル
- ウェットティッシュ
- 虫よけスプレー
- 妊娠の状態を伝える英文(妊娠何ヶ月目など)
- 航空会社用の診断書(出産日から28日以内の場合)
ただ自宅から空港まで、また帰国後の空港から自宅までの間に、体調が悪くなることもあるので、持っていくと安心ですよ(^^)
海外旅行中のトラブルに役立つ持ち物(書類)については、『海外旅行に保険証・免許証は持って行くべき?本当に海外に持って行くべきは〇〇です。』でご紹介しているので、ぜひ読んでみてくださいね!
ここで紹介した持ち物リストにもある『海外旅行保険の保険証券』についても、詳しく解説しています(^^)
妊婦さんにおすすめの海外旅行保険
海外旅行先で具合が悪くなって、現地の病院にかかる可能性を考えると、妊婦さんの海外旅行保険は必須です!
でも、クレジットカード付帯の海外旅行保険などでは、一般的に「出産、早産、流産に起因する疾病」はカバーされません(>_<)
妊婦さんが海外旅行をするときは、
- 妊婦さんでも加入できる保険
- 妊娠関連の医療費や費用が補償される保険
を選ぶことが大切です!
ただし、妊娠にまつわる医療費がカバーされるのは、妊娠22週目(妊娠6ヶ月)までということろがほとんどなので注意しましょう!
妊娠22週までならAIG損保の海外旅行保険
妊婦さんが加入できる海外旅行保険のなかでも、とくにおすすめなのがAIG損保の海外旅行保険です。
- 妊娠初期(妊娠22週未満)の異常による症状もカバー
- 24時間日本語でサポート
- 現地での治療費の立て替え払い不要
- 世界55万ヵ所以上の医療機関と提携
提携医療機関の多さや、日本語でのサポートが心強いですよね!
23週以降は海外の保険会社
調べてみたところ、現時点では、日本の海外旅行保険で、妊娠23週目以降の症状に適用される保険はありませんでした。
保険が適用されるうちに旅行を済ませるのが理想的ですが、どうしても23週目以降に行かなければならない場合は、海外の保険会社を検討してみましょう。
アトラス・トラベル海外旅行医療保険 (Atlas Travel)
アトラス・トラベルはアメリカの短期用の海外旅行医療保険で、妊娠が原因となる合併症も適用されます。
保険の適用は、妊娠26週(妊娠7ヶ月)までとなっています。
Bupa Global
Bupa Globalは、イギリス大手医療保険会社が提供する海外旅行医療保険です。
保険適用は、妊娠36週(妊娠10ヶ月、臨月になる前)まで可能です。(不妊治療による妊娠、多胎児の場合は18週まで)
ただしアトラス・トラベルも、Bupa Globalも海外の保険会社なので、日本語でのサービスには対応していません。
Bupa Globalのホームページで詳細をチェック(英語)
できれば妊娠22週(妊娠6ヶ月)以降は、海外旅行は控えたいですね!
妊婦さんが海外旅行するときの注意点のまとめ
今回は、妊婦さんが海外旅行をするときに注意するべきことや、機内で快適に過ごすためのコツなどについてお伝えしてきました。
もういちど、海外旅行先でのリスクを防ぐためのポイントを、簡単にまとめておきますね!
- 安定期に行く(できれば保険が適用される22週まで)
- 妊娠がカバーされる海外旅行保険に加入する
- 比較的近場で、衛生環境が良い渡航先・滞在先を選ぶ
- 無理のないスケジュールを立てる
- 機内ではエコノミークラス症候群に気をつける
- かかりつけの医師に英文で診断書を書いてもらうと◎
- 航空会社のマタニティサービスを活用する
妊娠中の海外旅行は、妊娠前と比べて、準備しなければならないことがたくさんあって大変ですよね。
でも、すべては未来の赤ちゃんのため(^^)
できるだけリスクを減らして、楽しい海外旅行の思い出を作りましょう!
航空会社のマタニティサービスなども、積極的に活用してくださいね♪
CA時代は、数え切れないほど、妊婦さんのフライトのお手伝いをさせていただきました。
そして自身も、妊娠中に海外旅行を経験しています!